作業療法士toshiの就労支援

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脳損傷者の自動車運転再開に必要な神経心理学的検査は?

こんにちは、作業療法士のtoshiです。

本日は、脳損傷者の自動車運転再開に必要な神経心理学的検査は?についてまとめてみました。(武原 格 脳損傷者の自動車運転再開に必要な高次脳機能評価値の検討 J Rehabil Med 2016 ; 53 : 247-252の内容を要約しました。)
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1,自動車運転再開の前提条件は?
2,自動車運転再開可能な神経心理学的検査結果の基準は?
3,まとめ



1,自動車運転再開の前提条件は?
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  ①医学的に全身状態が安定している。
  ②視野障害を認めない。
  ③杖や装具を用いてでも屋外歩行が自立している。
  ④上肢が廃用手でも入浴以外の日常生活動作が自立している。


  →自動車運転再開前に病態が安定しており、視野障害がなく日常生活が自立して行えることが大切なようです。 



2,自動車運転再開可能な神経心理学的検査結果の基準は?
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   東京都リハビリテーション病院で2008 年 11 月~2011 年 11 月までに入院し,運転を再開した脳損傷者の高次脳機能評価結果から各検査の平均値と標準偏差を算出したもの(以下参照)。
≪暫定基準値の結果≫
・MMSE (点) 28.0 ± 1.8 25 以上
・Kohs-IQ 99.0 ± 20.8 58 以上
・TMT-A(秒) 111.4 ± 36.0 183 以下
 TMT-B(秒) 151.5 ± 86.5 324 以下
・PASAT 2 秒(%) 55.7 ± 20.7 15 以上
 PASAT 1 秒(%) 34 ± 13.2 8 以上
・BIT(点) 144.4 ± 2.2 140 以上
・WAIS-Ⅲ 符号(粗点) 55.3 ± 16.4 23 以上 評価点 6.1 ± 2.4 2 以上
WMS-R 図形の記憶(点) 7.0 ± 1.4 5 以上 ,視覚性対連合(点) 9.8 ± 4.3 2 以上,視覚性再生(点) 36.7 ± 5.1 27 以上,視覚性記憶範囲 同順序(点) 9.6 ± 1.9 6 以上,視覚性記憶範囲 逆順序(点) 8.3 ± 1.6 6 以上


(*TMT-A および B は,平均値に標準偏差の 2 倍を加算した値を暫定基準値とし,それ以外の検査では平均値に標準偏差の 2 倍を減算した値を暫定基準値とした。小数点以下については,TMT-A および B では切り下げ,それ以外の検査では切り上げとした。この基準値は,一般的運転者の事故率と同程度の脳損傷者の高次脳機能検査結果を元に作成したもの)



同施設で行われた研究から、入院時期により 2 群に分類し、運転再開可能と判断された患者に対し,退院後 1 年以上経過した時点で毎年アンケートを順次送付し,自動車運転再開の実態調査を行った研究。


・基準群;2008 年 11 月~2011 年11 月までに入院し,運転を再開した脳損傷者。
・検証群;2011 年 12 月~2012 年11 月までに入院し,運転を再開した脳損傷者。


結果、71 名(男 64 名,女性 7 名)にアンケートを送付し,56 名から有効回答が得られた。回収率は78.9%であった。自動運転を再開している脳損傷者は 42 名。
   
・基準群の人数は 29 名で全員男性。

・検証群の人数は 13 名で男性 12 名,女性 1 名。高次脳機能検査結果がすべて暫定基準値内の脳損傷者は 9名(69.2%)。暫定基準値を下回った脳損傷者の高次脳機能検査項目は,1 名は MMSEおよび TMT-A,1 名は WMS-R の視覚性再生および視覚性記憶範囲逆順序,2 名は WMS-R の図形の記憶。
    

基準群および検証群を合わせて,直近 1 年以内における事故発生状況を調査したところ,柱や壁への衝突 2 名と走行中の事故 1 名。これらの衝突や事故は,基準群で生じており検証群ではなかったとしています。


検証群の約 7 割の脳損傷者は,すべての高次脳機能検査結果が暫定基準値内であり,かつ,全員事故を起こしていなかった.したがって,すべての高次脳機能検査結果が暫定基準値内であれば,机上の高次脳機能検査の結果から運転再開可能な認知機能があると言えるかもしれない.

しかし,

いくつか暫定基準値を下回った脳損傷者でも事故を生じず安全運転を行っていたことから,机上検査が絶対的基準になるとは言えず,症例ごとに運転再開の安全性について検討すべきであろう.としています。
また,暫定基準値作成に使用したデータの中には,評価結果のばらつきが大きいため標準偏差が大きくなったものも含まれており,暫定基準値をより精密なものにする必要があるとまとめています。




3,まとめ
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東京都リハビリテーション病院で行われた研究報告から、自動車運転再開を検討する上で前提条件(病態が安定しており、視野障害がなく日常生活が自立して行えることが大切)が整っていること。神経心理学的検査結果が暫定基準値内であれば,運転再開可否の目安となることが言えます。しかしいくつか暫定基準値を下回った脳損傷者でも事故を生じず安全運転を行っていたことから,机上検査が絶対的基準になるとは言えず,症例ごとに運転再開の安全性について検討すべきであるということが分かりました。



最後までお読みいただきありがとうございます。参考にしていただければ幸いです。



≪参考文献≫

◎武原 格 脳損傷者の自動車運転再開に必要な高次脳機能評価値の検討 J Rehabil Med 2016 ; 53 : 247-252

脳損傷者の自動車運転再開について②

こんにちは、作業療法士のtoshiです。

本日は、前回の続き脳損傷者の自動車運転再開についてまとめてみました。(内容はThe Japanese Journal of Rehabilitation Medicine2019 年 56 巻 10 号 脳損傷者に対する自動車運転再開に向けた指導 渡邉 修 p. 810-814の文献を要約しました。)

1,神経心理学的検査と脳画像評価は?
2,ドライビングシュミレーター、実車運転の評価は?
3,具体的な指導について

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1,神経心理学的検査と脳画像評価は?

自動車運転再開に向けて,神経心理学的検査はスクリーニング検査としての意義が大きいとされます。

◎Marshall らは,脳卒中患者の運転能力評価に関する17の研究論文のメタアナリシスから,評価尺度として有益な神経心理学的検査を抽出し,遂行機能系,知覚・認知系,注意・記憶系,言語系の 4領域に分類しています。
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図 は,渡邉が使用している神経心理学的検査に置き換えてまとめたものです。臨床では,これらの神経心理学的検査の特徴を理解し,複数の検査結果を踏まえて,総合的に運転能力の可否を判断しているようです。

・全般的認知機能には,WAIS-Ⅲ(WAIS-Ⅳ)を使用し、下位項目の中で,運転能力を反映する項目として,数唱,語音整列,符号,積木模様が報告されている。また,群指数では,知覚統合,作動記憶,処理速度が,運転能力の評価のうえで有益な参考値となるとされている。

・注意機能は,Trail Making Test(TMT)A&B が有用でありTMT 成績と運転能力には強い相関があるとしています。

・遂行機能は,遂行機能障害症候群の行動評価 日本版(Behavioural Assessment ofDysexecutive Syndrome:BADS)

・視空間機能として Behavioural Inattention Test(BIT)を使用。BIT で半側空間無視が明らかであれば運転はできない.とされています。

◎Regar らは27文献のメタアナリシスから,認知症患者の運転能力に関する介護者のレポート内容は,唯一,視空間認知能力および知的能力(mental state)を測る神経心理学的検査結果と相関していたと報告しています。机上検査において,注意障害や半側空間無視などの高次脳機能障害が顕著である場合は,実車運転には至らない.

さらに,

神経心理学的検査では異常がなくても,運転という量的負荷(運転時間の増大)や質的負荷(市街地などの難度の高い走行路)がかかると,とたんに高次脳機能障害があらわになることがあることにも留意する必要がある

理由としては、神経心理学的検査は,机上の静かな一室で行われるからであり,軽微な半側空間無視は,机上検査では顕著でなくとも,路上運転において検出されることがあると報告しています。

◎武原らは,運転能力を評価するうえで参考となるこれらの神経心理学的検査結果の基準値を報告しており、基準値に至らない例は,実車評価を鑑みながら運転再開について,その是非を含めて指導を行う必要があるとしています。


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脳画像について脳 CT や脳 MRI脳損傷の部位と範囲を確認する必要があります。下記の部位が画像上広範に損傷されている場合は運転は望めないとしており損傷部位と範囲に沿った運転再開時の指導が必要としています。

〇両側前頭葉は,注意機能,遂行機能,ワーキングメモリー,展望性記憶,病識,感情のコントロール
〇右頭頂葉は,視空間認知。


2,ドライビングシュミレーター、実車運転の評価は?

渡邉らは身体機能,認知機能の評価にて運転再開の可能性があると判断された場合,ドライビングシュミレーター(以下DS) にて運転能力を評価している。
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(出展:Honda セーフティナビ)

DS は,ハンドル,ブレーキ,アクセル,ウインカーなどが模擬的に装備され,運転中はフロント画面に流れる景色と音響が用意され,より実践的な運転能力が評価可能である。

◎Imhoff らは,文献レヴューから,DSは,脳外傷者の自動車運転能力の評価および運転技術を向上させるためリハビリテーション治療として有用であると報告している。


実車運転評価について、
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◎Fox らは,1971~1998年までの文献レヴューから脳損傷者の自動車運転能力評価には机上の神経心理学的検査に加えて実車運転による 能 力 評 価 を 推 奨している。

また、

◎D’apolito らもまた,2000~2010年の文献を渉猟し脳損傷者の運転能力評価には実際の自動車運転(on-road assessments)が必要であると結論している。

◎Just らは,機能的 MRI を用いて運転をしながら話しかけられた内容が正しいか誤りかを判断する課題を行ったところ空間認知にかかわる頭頂葉の活動が 37%低下したと報告している。



3,具体的な指導について
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脳損傷が軽微で実車運転評価で問題のない場合でも,渡邉は運転再開を行う脳損傷例には,全例,8つの指導を行っているとのことである。

①あらかじめ運転前にルートを確認し、シンプルなものにする。運転の全行程は,迷うことのない,明確,単純で,渋滞などの妨害刺激の少ないルート,時間帯をあらかじめ選択しておく。
②運転前に,体調がよいことを確認する。睡眠不足や疲労感があれば中止する。
③運転時間を短くする。こまめに休養をとる。
④運転中は話をしない。ラジオなど聞かない。
⑤速度を上げない。高速は,前頭前野をはじめ大脳にとって負担となるので,事故に結びつきやすくなる。
悪天候時および夕方~夜間は運転をしない。
⑦なるべく同乗してもらう。適宜,運転能力をモニターし,随時,運転についての指示を受ける。
⑧なるべく安全運転設備が装備された車で運転する。


まとめ

脳損傷者が社会復帰をしていくうえで再び自動車を自ら運転できることの意義は大きいと思いますが、認知症てんかん発作などの脳損傷に起因する痛ましい事故報道もある。医療者は科学的な視点での脳損傷者に向けた安全な自動者運転のための能力評価と指導が求められている。患者が病院を退院する時点において,きちんと運転能力についての説明を行う必要があり、その際には,運転に求められる視覚機能,運動機能,高次脳機能などについて精査を行い,運転能力の可能性がある場合は,実車運転による 能 力 評 価 も行う必要があることが分かりました。


最後までお読みいただきありがとうございます。参考にしていただければ幸いです。

≪参考文献≫
◎The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine2019 年 56 巻 10 号 脳損傷者に対する自動車運転再開に向けた指導 渡邉 修 p. 810-814

脳損傷者の自動車運転再開について①

こんにちは、作業療法士のtoshiです。

本日は、脳損傷者の自動車運転再開についてまとめてみました。(内容はThe Japanese Journal of Rehabilitation Medicine2019 年 56 巻 10 号 脳損傷者に対する自動車運転再開に向けた指導 渡邉 修 p. 807-810の文献を要約しました。)

1,脳損傷後に運転再開した方の事故率は?
2,自動車運転再開の基準は?
  ①身体機能 ②高次脳機能
3,まとめ

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1,脳損傷後に運転再開した方の事故率は?

脳損傷によって自動車運転事故の危険性は増すとする報告がある一方で一般の事故発生率や非脳損傷者との比較で有意差が無かったとする報告もあり事故率が増す?有意差なし?と明確なことは分かっていません。

ただ、はっきりと言えることは脳卒中や脳外傷などの後天性脳損傷者が社会的復帰をしていくうえで、自動車運転の再開ができる事の意義は大きいと言えます。しかし昨今の交通事故報道をみていると、認知症てんかん発作など脳損傷者に起因する数々の痛ましいものがあり、このことを考えると医療者が科学的な視点で脳損傷者に向けた安全な自動車運転のための評価や指導が求められることになります。

医療者が運転可否を適切に評価し、脳損傷者の運転について多面的に注意を払えるように私たちはどのように関わる必要があるのかを考える必要があります。
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2,自動車運転再開の基準は?

●米国医学会のガイドラインでは安全な自動車運転を実現するためには①視覚 ②運動 ③感覚の3つの要素があると述べています。

一方、

●我が国の道路交通法では、安全運転に必要な「認知、予測、判断または操作」のいずれにかかわる能力を欠くこととなるおそれのある症状を呈する病気は、運転免許の拒否または保留の対象になるとしています。ここで重要な点は一部の病気(認知症など)を除いては、病名によって運転能力が欠格している(絶対的欠格事由)とはせず、「認知、予測、判断または操作」能力の有無で運転能力を判断する(相対的欠格事由)点です。

ここからは、脳卒中および脳外傷などの後天性脳損傷者を対象にした運転能力の評価についてまとめてみます。

◆身体機能の確認
本邦の道路交通法(第97条、道路交通法施行規則第23条)に掲げられている自動車などの運転(普通免許)に必要な適正についての免許試験(適正試験)における合格基準の抜粋を下記に示します。

・視力  両眼0.7以上かつ一眼それぞれ0.3以上。一眼視力が0.3に満たない場合、他眼視野が左右150度以上かつ視力0.7以上。
・色彩識別能力 赤色、青色及び黄色の識別ができること。
・聴力  両耳の聴力が10mの距離で91dBの警音器の音が聞こえること。
・運動能力 四肢または体幹について運転に必要な運動能力を有していること


①視覚機能
脳卒中、脳外傷などで最も問題となる視覚障害は、視野障害半側空間無視。基本的に両者のいずれかが認められた場合は、運転はできません。合格基準では、視力が両眼で 0.7以上あれば視野障害は問われないので視野障害半側空間無視があっても視力が 0.7 以上あればこの基準を通過してしまいます。

②四肢体幹の運動機能
片麻痺や失調がみられても座位が保たれ、安全な運転操作が可能であれば運転は再開できます。その際、ハンドル操作についてはノブをつける、右片麻痺であれば、クラッチの位置の変更などの運転補助装置も考慮する必要があります。この場合も、こうした代償手段を使いこなす能力が必要であり、病気や事故の前には経験のない行為なので、十分に練習をする必要があります。

③全身状態の安全性
運転に際し、医学的に安定していることを確認する。脳卒中の場合は再発の危険がきわめて低く障害の進行がないことを確認する。
・英国運転免許交付局(Driver and Vehicle Licensing Agency:DVLA)が示している運転再開の基準では脳血管障害(脳梗塞脳出血、一過性脳虚血発作など)の場合、発症後1カ月は運転を控え職業運転手であれば 1年間は運転を控えるとされています。
・カナダオンタリオ州で示されているガイドラインでは治療されていない脳動脈瘤を有する患者は運転はできず、外科的治療を受けた脳動脈瘤患者でも運転を開始するには 3カ月は待つ必要があると記載されており、合併症が管理されていることも運転再開に際し重要なポイントととなります。糖尿病に対し血糖値が安定していること、高血圧症に対し血圧が安定しコントロールされていることを確認する。運転再開後も定期的にこれらのデータをチェックする必要があるとしています。

てんかん発作は、道路交通法において運用基準が示されているが運転再開する場合は基本的に2年以上てんかんが起きていないことを確認する。その際、抗てんかん薬を服用しているかどうかは問わない。日本てんかん協会は「運転に支障を生じるおそれのある発作が 2年間ない」ことを運転再開の条件としています。

てんかん発作の誘因として、飲酒、喫煙、ストレス、疲労過呼吸などが挙げられているので、運転再開に際してはこれらに対する生活指導も重要であるとしています。


◆高次脳機能の確認
Michonは、運転における認知機能について、3つの階層構造を提案しています。Strategical level、Tactical level、Operation level

Strategical level では、運転目的と運転計画を立案し実行に移すまでの認知機能、および運転中の計画の柔軟な変更、決定。運転中に起きるさまざま状況を可能性として想起し、プランの取捨選択の中から方向性を判断、決定をしていき左右の前頭前野を主体とする遂行機能が動員されます。また、このレベルでは運転の安全性に対する自己責任の自覚と自己の運転能力の限界を自覚するメタ認知を含みます。このレベルは、通常のドライビングシミュレーターで評価することは難しいとされています。

Tactical level では、運転中の刻々と変化する状況に対応する認知機能が求められます。障害物を回避し車間距離をあけた安全な運転を実現するためには、注意機能、遂行機能、視覚走査能力、時間推定能力、視空間認知機能、視覚・運動変換能力を要し、両側前頭葉、右頭頂葉後頭葉から角回、縁上回に至る視覚処理機能が動員されます。また、運転中の急な事態に対応しなければならないので、迅速な情報処理速度が必要であり。さらに、こうした運転を冷静に施行するうえで感情をコントロールする能力も保たれている必要があります。

Operational level は、ブレーキ、アクセル、ハンドルなどを視覚情報をもとに運動に変換する過程です。後頭葉から前運動野を経由して運動野に至る経路、前頭葉基底核を結ぶ閉鎖回路、前頭葉と対側小脳とを結ぶ閉鎖回路が動員されます。

以上の自動車運転にかかわる高次脳機能の局在を、左右の大脳半球上におおまかにプロットすると図 のように示すことができます。f:id:Mazu07:20210103064151p:plainf:id:Mazu07:20210103064945p:plain
両側前頭葉に、注意機能、遂行機能、展望性記憶(予定を記憶し適切な時期に思い起こす能力)、ワーキングメモリー、病識(self-awareness)、感情のコントロールの主座があり、右頭頂葉に視空間認知の主座があります。

米国医学会のガイドラインでは、運転能力に関する高次脳機能のスクリーニング項目として下記に示す 7つの高次脳機能を指摘されています.

①視覚情報処理(視覚性認知および処理、視覚探索)
②視空間認知
③短期記憶、長期記憶、ワーキングメモリー
④選択性および転換性注意
⑤遂行機能(計画性、判断)
⑥言語
⑦注意持続性

渡邉らは、ドライビングシミュレーター運転中の脳血流動態を機能的近赤外分光法によって測定し、運転中は両側前頭葉(特に右前頭葉)を中心とし、さらに両側頭頂葉(特に右頭頂葉)が活動することを確認しました。

つまり、安全な自動車運転は、左右大脳半球の広範な高次脳機能を要するとしていいます。

以上の運転にかかわる高次脳機能が保持されているかどうかを診察、神経心理学的検査および脳画像検査を通して診断していく必要があるとしています。
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3、まとめ

本日は、脳損傷者の自動車運転再開についてまとめてみました。(The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine2019 年 56 巻 10 号 脳損傷者に対する自動車運転再開に向けた指導 渡邉 修 p. 807-810の文献を要約しました。)

脳損傷後に運転再開した方の事故率は?
脳損傷によって自動車運転事故の危険性は増すとする報告がある一方で一般の事故発生率や非脳損傷者との比較で有意差が無かったとする報告もあり明確なことは分かっていません。ただはっきり言えることは脳卒中や脳外傷などの後天性脳損傷者が社会的復帰をしていくうえで、自動車運転の再開ができる事の意義は大きいと言えます。医療者が運転可否を適切に評価し、脳損傷者の運転について多面的に注意を払い関わっていく必要があります。

〇自動車運転再開の基準は?
道路交通法(第97条、道路交通法施行規則第23条)に掲げられており、自動車などの運転(普通免許)に必要な適正についての免許試験(適正試験)における合格基準を確認する必要があります。また脳損傷者の運転についての評価として身体機能(視覚機能、四肢体幹の運動機能、全身状態の安全性、生活指導の重要)、高次脳機能(左右大脳半球の広範な高次脳機能を要すること)両面を念頭に置き関わっていく必要があります。

最後までお読みいただきありがとうございます。参考にしていただければ幸いです。

≪参考文献≫
◎The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine2019 年 56 巻 10 号 脳損傷者に対する自動車運転再開に向けた指導 渡邉 修 p. 807-810

企業における障害者雇用のメリットについて

こんにちは、作業療法士のtoshiです。

本日は、企業における障害者雇用のメリットについて以下の3つにまとめてみました。
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1,障害者雇用とは
2,障害者雇用促進法とは
3,障害者雇用のメリットは?

まず、
1,障害者雇用とは  
企業や自治体などが障害者雇用枠で障害のある方を雇用すること。障害者雇用枠で働くためには、原則「障害者手帳」が必要となります。
企業や地方自治体などは、常勤の従業員のうち一定割合の障害者を雇用することが義務づけられている。働き口の少ない障害者の雇用を促進するために用意された制度。
障害者雇用促進法よって規則が定められ、それに基づいて各事業主や自治体が実施しています。その目的は「障害者の職業の安定を図ること」とされています。出展:Weblio辞書「障害者雇用」、LITALICOワークスより

2,障害者雇用促進法とは
障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、職業リハビリテーションの措置等を通じて、障害者の職業の安定を図ること。

事業主に対する措置
◎雇用義務制度
事業主に対し、障害者雇用率に相当する人数の障害者の雇用を義務づける
・民間企業 2.2%(2021年4月より2.3%)
・国、地方公共団体特殊法人等2.5%(2021年4月より2.6%)
都道府県等の教育委員会 2.4%(2021年4月より2.5%) ※大企業等において、障害者を多数雇用する等一定の要件を満たす会社(特例子会社)を設立した場合等、雇用率算定の特例も認めている。

◎納付金制度
〇納付金・調整金納付金
障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図る。
障害者雇用納付金(雇用率未達成事業主) 不足1人 月額5万円徴収 (適用対象:常用労働者100人超)※ 常用労働者100人超200人以下の事業主は、不足1人 月額4万円
障害者雇用調整金(雇用率達成事業主) 超過1人 月額2万7千円支給(適用対象:常用労働者100人超)※ この他、100人以下の事業主については報奨金制度あり。(障害者を4%又は6人のいずれか多い人数を超えて雇用する場合、超過1人月額2万1千円支給)
上記のほか、在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する特例調整金・特例報奨金の制度がある。(在宅就業障害者支援制度)

〇各種助成金
障害者を雇い入れるための施設の設置、介助者の配置等に助成金を支給。
・障害者作業施設設置等助成金・障害者介助等助成金

障害者本人に対する措置
◎職業リハビリテーションの実施。
地域の就労支援関係機関において障害者の職業生活における自立を支援<福祉施策との有機的な連携を図りつつ推進>
ハローワーク(全国544か所) … 障害者の態様に応じた職業紹介、職業指導、求人開拓等
・ 地域障害者職業センター(全国52か所) … 専門的な職業リハビリテーションサービスの実施(職業評価、準備訓練、ジョブコーチ等)
・ 障害者就業・生活支援センター(全国334か所) … 就業・生活両面にわたる相談・支援
出展:厚労省 障害者雇用促進法の概要より

3,障害者雇用のメリットは? 
障害のある方の雇用を進めることは、企業価値の向上や多様性のある組織作りなど、多くのメリットをもたらすものでもあります。また、雇用全体の方針を見直すきっかけにもなり、業務の効率化や生産性向上に繋がるなど、様々な効果をもたらします。企業にとって障害者を雇用することは、法的義務を果たすための大変重要な取り組み事項ではありますが、それ以外にも多くのメリットを生む可能性を秘めています。障害者雇用によって得られるメリットを次の4つにまとめてみました。

①業務を見直し、最適化・効率化を図るきっかけになる。
②生産性が向上し、戦力として活躍する。
③社会的責任(CSR)を果たす、企業としての価値創出につながる。
④多様性のある企業文化、組織作りができる。

1.業務を見直し、最適化・効率化を図るきっかけになる
→障害のある方を雇用する場合、個々の障害の特性や職務能力に合わせて働ける業務を創出する必要があります。この「業務の見直しと切り出し・創出」は、社内の業務全体の最適化、効率化を見直すチャンスにもなります。障害のある方が取り組む業務としても比較的切り出しやすいと言われています。業務を創出するためには、日常の業務の中で何気なく行っている作業を内容や行程、進め方などの視点で改めて見直す必要があります。その過程が、障害者のためだけでなく、部署や会社全体の業務の最適化、効率化を図るきっかけとなるのです。

2.生産性が向上し、戦力として活躍する
→障害特性をしっかりと理解し、適切な職務配置を行うことで、障害者が定着して働くことができます。さらに適切な人事評価制度やマネジメントによって生産性が向上し、戦力として活躍できるようになります。近年のIoTやツールの進化によって、障害者が担うことができる仕事の幅が拡大し、円滑なコミュニケーションも可能になってきているため、マネジメントでの負荷も軽減されつつあります。また、テレワーク雇用など、働く場所や勤務形態の選択肢も徐々に増えているので、働きやすい環境の中でより生産性を向上させることも可能です。「障害特性があっても働ける」だけでなく「障害特性によって貢献する」ことができるようになりつつあります。このような社会的な変化も後押しとなって、障害者の活躍機会はさらに高まっていくでしょう。

3.社会的責任(CSR)を果たす、企業としての価値創出につながる
→近年、企業経営の観点においては「ダイバーシティ&インクルージョン」や「働き方改革」という概念が注目されています。社会課題解決は、「社会の公器」である企業の果たすべき役割として求められるようになりました。企業が障害者を雇用するということは、障害者の方が活躍できる場を提供するという意味を持つため、大きな社会貢献につながります。障害者雇用率制度とは、障害者が社会保障費を受給する立場から、みずから労働して対価を得て自立し、社会で活躍できるようにするため設けられた制度です。障害者雇用を積極的に取り組むことによって、「社会的責任を果たしている企業」として、企業価値の向上につなげる可能性を秘めています。

4.多様性のある企業文化、組織作りができる
ダイバーシティの重要性は社会的にも広がっていますが、企業の雇用においても多様化が一層進むであろうと予想されます。ダイバーシティとは性別や人種の違い、障害の有無を問わず、多様な人材を活用しようという考えです。
障害者と共に働くことで「違い」に気付くことができ、お互いの理解を深め配慮しようという助け合いの空気を育むことができるでしょう。また、新しい発想や視点を発見することもできます。障害特性や職務能力などから、障害者の中にも「個性」があるという事を知ることができるはずです。障害者雇用は企業内に真の多様性を生み、より強固な組織作りを可能としてくれます。出展:PERSOL CHALLENGEより

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本日は、企業における障害者雇用のメリットについてまとめてみました。
参考にしていただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

休業手当と休業補償ついて

こんにちは作業療法士のtoshi です。

 

本日は、休業手当と休業補償ついてまとめてみました。

名称が似ており混同しやすいのですが全然違うものでした。

 

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1、休業手当とは

2、休業補償とは

3、まとめ

 

■休業手当とは

会社の責任によって休業が発生した場合に、従業員に支払われる手当のこと。経営悪化による生産調整によって業務が減少、ストライキにより会社が休業したが自分は参加しなかったなどがあります。この場合、会社は休業した分の賃金の60%以上にあたる金額を従業員に支払わなくてはならず、違反すると会社に罰則が科されます。ただし、自然災害などが原因の場合、不可抗力と認められ、会社に責任はないとされるのです。

 

●休業手当の種類

「使用者の責に帰すべき事由」以外での休業でも、健康保険や労災保険雇用保険などから受け取れる手当や給付金があり、これらは、休業補償や休業手当とは意味合いが異なります。

 

・産前産後期間の休業

・育児のための休業

・介護での休業

・業務上での負傷、病気の治療中。

 

たとえば、

 

産前産後休業や育児休業では就業規則で定められている場合を除き、原則として賃金は発生しません。この場合は、健康保険や雇用保険から一時金や手当金、給付金が支給されます。

 

 

●休業手当の対象者

休業手当は、雇用形態にかかわらず、正社員や契約社員、パートタイマーなど、すべての労働者に対して支給される制度です。しかし中には、支給するかどうか判断に迷うケースもあるでしょう。

 

就職内定者に対し会社都合で休業を指示した場合、労働契約が締結されていれば、会社に休業手当義務が発生します。派遣社員が派遣先の会社都合で休業する際は、派遣元会社に支給義務が発生します。その際派遣社員は、ほかの派遣先の紹介を求めることも可能です。

 

■休業補償

業務や通勤によるケガや病気の休業を補償する。休業開始から4日目以降の平均賃金の80%が労災保険から支給され、所得税の課税対象にならない。

 

●休業補償支給概要

業務や通勤が原因で起きたケガや病気による休業に対する補償である「休業補償」の給付制度には、以下の2種類があります。

 

・休業補償給付:業務が原因の場合

・休業給付:通勤が原因の場合

 

ここからは従業員が業務上のケガや病気の療養のため休業せざるを得ないとき、生活保障として一定額が支給される「休業補償給付」について解説します。

 

●支給条件

休業(補償)給付は、以下3つの要件をすべて満たした場合にのみ支給されます。

・療養中:療養中は支給対象ですが、治癒後に外科処置で休む期間は補償期間に含まれない。

・働けない状況:休業補償は働くことができない期間に適用される。以前の業務ができなくても、別の軽度な作業に参加できる場合、給付を受けられない。

・賃金を受け取っていない:休業中の従業員に対して企業が賃金を支払っていない状況でなければならない。

 

●支給金額

休業補償の支給金額は、「全部労務不能」と「一部労務不能」によって異なり、1日単位で計算されます。

 

・全部労務不能:所定労働時間のすべての業務に就労できない場合、一日あたり給付基礎日額(平均賃金に相当する額)の60%が支払われる。

・一部労務不能:病院への通院など、所定労働時間の一部分に就労できない場合、給付基礎日額から労働した部分に支払われる賃金額を引いた金額の60%が支払われる。

 

いずれの場合も、「休業特別支援金」として基礎日額の20%が加えて支給されます。

 

●支給期間

休業(補償)給付は、休業開始後4日目から休業が終了するまでの期間が対象です。また、休業開始から3日間は「待機期間」となり、休業補償および休業特別支援金は支払われません。待機期間は継続した3日間である必要はなく、休日はカウントされません。

 

しかしこの待機期間中には、会社から給付基礎日額の60%が支払われます。療養開始後1年6カ月を経て傷病(補償)年金の受給に切り替わった場合、休業(補償)給付はありません。

 

■まとめ

・休業手当は、会社の責任によって休業が発生した場合に、従業員に支払われる手当のこと。休業期間分に支払われる平均賃金の60%が会社から支払われ、課税対象になる。

・休業補償は、業務や通勤によるケガや病気の休業を補償される。80%が労災保険から支給され、所得税の課税対象にならない。

 休業手当と休業補償は名称が似ており混同しやすいですが全然違うものでした。

 

用語の違いをしっかりと把握し制度内容(支給概要、条件、金額、期間等)をしっかりと押さえて置く必要があると思いました。

 

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最後まで読んでいたきありがとうございます。

 

≪引用≫

●カオナビ 人事用語集

 

休業中に受けられる公的サポートについて

こんにちは、作業療法士のtoshiです。

本日は、休業中に受けられる公的サポートについてまとめてみました。病気やけがによって、仕事を休業しなければいけなくなった時、どのような公的サポートがあるのかを調べてみました。


以下の2点についてお伝えします。
1,休業と休職の違いは?
2,休業中に受けられる公的サポートは?


1,休業と休職の違いは?
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■休業とは、
会社と労働者との間で労働契約関係が継続している状態で、休暇(休日)を連続してとることをいいます。労働者には働く意思があるのに、何らかの事情があって働けないためにお休みする場合で以下の2つがあります。① 会社側の都合によるもの②労働者側の都合によるものです。

①会社側の都合による休業
休業の中でも『会社側の都合』として分かりやすいのは、原材料の高騰などによる工場の操業停止のための休業。また大規模な震災なども含まれます。労働基準法では、会社側の都合による休業の場合、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いを義務付けています。会社側の都合での休業の場合には、労働者が業務に従事しなくても、会社は労働者の生活を保障するために休業手当の支払い義務を負います。

②労働者側の都合による休業
休業を労働者から申し出る場合にも色々なケースがありますが、代表的なものとして育児、介護、産前産後などの休業で、労働者が自分の必要に応じてお休みをとる場合です。労働者側の事情による休業の場合、会社は必ずしも賃金を支払う義務を負うわけではありません。各種の給付金をもらえるように申請するのが一般的です。

■休職とは、
会社側が、その労働者を業務にあたらせるのには不適当な理由があると判断した場合に、業務を停止させることをいいます。会社と労働者との間に労働契約関係が継続しているにも関わらず労働者が業務をしていない状態で、労働契約は存続しているので解雇とは違います。会社に在籍しているのですから、就業規則は適用されます。

休職の場合、会社が労働者に対して休職の命令を出すか、労働者からの休職の申し出を承認することが必要です。命令も承認もない状態では休職として扱えません。休職している間は、仕事をしないこと自体が会社側の責任ではないので、賃金は支払われません。これが、休業との大きな違いです。


→「休業」と「休職」の大きな違いは「賃金の支払い義務があるかないか」ということです。



2,休業中に受けられる公的サポート
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「休業補償給付」と「傷病手当金」の2種類があります。

■休業補償給付とは
業務や通勤時の原因による休職、つまり労災にあたる場合に定められた制度。

受給条件は①業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため②労働することができていない③賃金を受けていない

支給額は休業(補償)給付=(給付基礎日額の60%)×休業日数  休業特別支給金=(給付基礎日額の20%)×休業日数 ※休業の初日から第3日までを待機期間といい、この間は業務災害の場合は事業主が労働基準法の規定に基づいて休業補償を行います。

支給期間は2年

申請方法は「休業補償給付支給請求書」または「休業給付支給請求書」を提出します。以下の手順によって給付を受けることができます。

①事業主・医療機関が請求書に証明。
②被災労働者が請求書を労働基準監督署に提出。
労働基準監督署から支給決定通知が来る。
④厚生労働本省を通じて支払いを受ける。


傷病手当金とは
業務や通勤時に原因がなく労災に当たらない場合に、健康保険組合により被保険者とその家族の生活を保障するために定められた制度。

受給条件は①業務外の事由による病気やケガの療養のため②仕事に就くことができないこと③連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと④賃金を受けていないこと

支給額は1日あたりの金額=(支給開始日以前の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×3分の2

支給期間は1年6か月

申請方法は「健康保険傷病手当金支給申請書」を記入し、医師・事業主にも証明をもらい、全国保険協会へ提出する。



本日は、休業中に受けられる公的サポートについてまとめてみました。病気やけがによって、仕事を休業しなければいけなくなった時、どのような公的サポートがあるのかを調べました。


以上の事を意識しておくことで利用者さんや対象者さんの就労支援や復職支援をされる際に復帰の目処や訓練期間を想定することができます。また補償制度を利用することで利用者、対象者の精神的影響を大きく与えることが可能となります。



最後まで読んでいただきありがとうございます。

≪引用≫
厚生労働省 
 みんなのメンタルヘルス 総合サイト

●カオナビ 人事用語集
   

急性期からの就労支援 作業療法士の関わりについて

こんちには、作業療法士のtoshi です。

 

本日は、急性期からの就労支援に作業療法士がどういう関わりをしていくのか?について、まとめてみました。(内容は、峯尾 舞 ベットサイドから始める就労支援 OTジャーナル 54(6)p516-522の内容を要約しました。)

 

急性期はどのような時期?

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急性期の時期は、救命や後遺症を最小限に抑えるための治療が行われます。なんとか一命を取り留めたが、今後の生活面、経済面等について見通しがもてず、発症・受傷前の自分と現在の自分を比較し、漠然とした不安感が沸き起こる。このような状況の中、「働くこと」は患者にとって具体的で重要なテーマとなります。

 

就労支援を開始する上で重要なことは、患者自身が働きたいかどうかの気持ちや就労に対する考え方や思いを確認する事が重要になります。就労を達成できるかはここが鍵になります。

 

しかし、

 

まず取り組むべきことは就労の前に、耐久性を向上させる、ADLおよびIADLが自立する、自分自身でスケジュールを立て管理できる、コミュニケーション能力の向上を図る等、急性期に開始するリハビリテーションそのものが非常に重要となります。そのため、患者の働きたいという意思が明確な場合は、日々のADL、IADLもないがしろにせず、むしろこの積み重ねが就労に向かう重要なステップという位置づけを認識・共有することが大事になります。

 

もう一つ重要なことは、主治医の考える治療方針や予後をきちんと把握し、主治医の考えと、作業療法士の考える就労支援スケジュールや方針が食い違いのないようにする必要があります。医師や他職種と情報を共有し、患者の希望する復職や新規就労を目指し患者にフィードバックすることで患者のモチベーションアップや、患者との信頼関係を構築することが大事となります。

 

ベッドサイドから始める就労支援は?

医師, 病院のベッド, 配信, 労働, 医学, 職業, 人, 女性, ヘルスケア

1、働くことに対する意思確認。

本人の働くことへの意思確認を行い、働く目的を掘り下げ「なぜ働くのか?」「何のために働くのか?」という点について確認しておくことが大事です。

 

2、発症・受傷前の働き方の確認。

発症前・受傷前の一日のスケジュールから働き方を確認し、患者が重視していたこと、働くことに関する価値観を把握することが復職や新規就労を考える際の道筋を立てる際に重要な情報となります。

 

3、今後の働き方をイメージしてみる。

急性期の内に今後の働き方をイメージすることは、働く前に解決課題の洗い出しにつながり、また、その後の職場とのやり取りについても具体的にイメージしやすくなります。

 

4、仕事を辞めず休む選択の提案。

発症や受傷により、すぐに復職することが難しい場合も「休職」という選択肢があるかもしれません。患者本人のみならず、家族とも情報共有しながら、仕事を辞めずまず休むことを選択し提案することが重要となります。

 

5、活用可能な制度や社会保証の紹介。 

傷病手当金等が利用できないか職場に確認するように依頼する。一方で障害者手帳障害年金、失業手当等は、まだ今後の見通しがもてない急性期で紹介するかどうか慎重に判断していきたいところです。

 

6、職場との連絡調整。

職場の方々がお見舞いで来院される可能性があり、患者や家族の許可を得られれば職場の担当者に挨拶をするチャンスがあるかもしれません。医療機関を相談先としてインプットできると、その後の支援に協力を求めやすくなる可能性があります。

 

7、家族支援。

就労支援は、患者本人のみならず家族支援も欠かせません。患者が休職または退職することにより、経済的な支えを失い、家庭内の役割を変えなくてはならない場合もあります。間接的でも家族の支えにつながるような情報提供をすること、家族の疑問や不安の聴取することが重要です。フォーマルな社会資源だけでなく、インフォーマルな社会資源(家族会)の紹介なども行っていきます。

 

8、精神的支援。

急性期は、精神的支援が必要な時期です。神経心理学的検査では高得点だったため病前の職場に復職したけれどうまく行かず抑うつ状態になった方やうつ病を発症された方々など少なくありません。神経心理学的検査の結果はあくまでも参考値とし、どのような職場だったとしても、復職前に職場と本人との間で障害状況の確認や、ミスが出ないよう確認が必要な部分について相談をして置くことが重要となります。また、不調が出た時にすぐに相談できる先を見つけておくことも重要となります。

 

 

まとめ

 ドリーム キャッチャー, タリスマン, インド, 羽毛

急性期からの就労支援として、まず本人の就労に対する思いや考え、意思を確認すること。患者の意思が明確な場合は、日々のADL、IADLもないがしろにせず、就労に向かう重要なステップにすること。そのためにベッドサイドから始められる就労支援は、働き方の確認や働き方のイメージをすること。活用可能な制度や社会保険の紹介。職場との連絡調整、家族支援や精神的支援など作業療法士の役割は多岐に渡ることが分かりました。

 

本日は、急性期からの就労支援に作業療法士がどういう関わりをしていくのかついてまとめました。皆さんも急性期から就労支援に関わる事がありましたら参考にしていただければ幸いです。

 

最後まで読んでいたきありがとうございます。

 

参考文献

○峯尾 舞 ベットサイドから始める就労支援 OTジャーナル 54(6)p516-522