作業療法士toshiの就労支援

作業療法士であるtoshiが就労支援についての情報を定期的に発信します。

両立支援コーディネーターに求められる医療知識(脳卒中分野)

こんにちは、作業療法士のtoshiです。


本日は、「両立支援コーディネーターに求められる医療知識(脳卒中分野)」についてまとめてみます。



両立支援を行う上で、基本的な医療知識が必要となります。


その理由は、
典型的な疾病や治療に関して、その特徴、経過および就業に当たって影響するため

また、

疾病のみならず障がいに関する理解(回復過程、障害者手帳)は両立支援の基本となるからです。


1,脳卒中とは
2,治療と経過
3,両立支援の留意点

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1,脳卒中とは


1)病理

脳卒中とは、「脳に突然(卒)あたる(中)」という意味で、
脳血管疾患ともいわれています。


病型は大きく3つに分けられます。
・脳血管が詰まる→脳梗塞
・脳血管が破れる→頭出血。
・脳血管のコブ(脳動脈瘤)→クモ膜下出血
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2)疫学

脳卒中は昔に比べて死因順位は下がっているが、患者数は多い。
厚生労働省平成26年患者調査」によると117.9万人(男性59.2万人女性58.7万人)と推計され、そのうち約14%(16.7万人)が就労世代(15~64歳)に相当します。

基本的に動脈硬化が進行する50歳代以降に急増する疾患であり、今後就労年齢の引き上げに伴い、両立支援の対象者が増加することが予想されています。


日本脳卒中データバンク(2019年度)によると、病型別に見た患者割合は脳梗塞が最も多く75.9%を占め、次いで脳出血18.5%、クモ膜下出血5.6%という頻度となっています。
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3)症状


典型的なものは、突然起こる以下の3症状です。
①片方の手足・顔面半分の麻痺や痺れ。
②呂律が回らない、言葉が出ない、
 他人の言ったことが理解できない。
③片方の目が見えない、物が二重に見える、視野半分が欠ける。

これに加えて脳卒中を考えるべき症状としては、

④力はあるのに歩けない、フラつく。
⑤今までにない激しい頭痛。
意識障害
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このような症状があれば病院受診をすべきで、救急車の利用もためらうべきではありません。


脳卒中という病名でも症状は様々で原因となった病態の違いにより脳のどの部位がどの程度損傷されたかで決定します。




2,治療と経過

治療
脳梗塞では発症から4.5時間以内であればt-PA静注療法(点滴)で血栓溶解薬を投与する治療
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6時間以内に血管内カテーテル治療(血管内にカテーテルを入れて血栓回収する血管内治療)の適応がある場合もあります。
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脳出血で脳内に出血した血液の塊が大きい場合、周囲の脳組織が圧迫され壊死することを防ぐために手術で血腫を取り除く場合があります。 


→開頭血腫除去術
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内視鏡下血腫吸引術
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クモ膜下出血では、破裂脳動脈瘤を手術で
直接的にクリップする方法

クリッピング
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血管内カテーテルで脳動脈瘤内に
特殊な金属コイルを詰める方法

→コイル塞栓術
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などで治療される場合が多い。


いずれの病型でも治療でもなるべく早い時期からリハビリテーションを併せて行うことが推奨されており、状態が落ち着くに従って活動量も増加していきます。


経過
軽症の場合は急性期治療を終えて直接自宅退院する場合がありますが、多くは回復期リハビリテーション病院へ転院します。

そして、この転院には期限が定められており回復期リハビリテーション病院へは発症から2か月以内6か月までに退院しなければなりません。


*入院期間が6か月までとされている根拠としては、脳卒中後の運動麻痺などの回復が6か月を経過すると機能改善が難しいというデータがあります。


しかし、


高次脳機能については年単位で改善が認められるという報告もあり、継続的なリハビリテーションが必要な患者にとっては制度上の支障となっています。
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いずれにせよ回復期退院後も医療リハビリテーションを受けるためには制限があり、重症者にとっては十分なリハビリテーションを受けることが難しくなり、介護保険を利用するなどの工夫が必要となります。


さらに、


急性期・回復期・生活期という各時期を担う医療機関が同一地域にないことも多く、リハビリテーション資源が不十分な地域も多いのが実情です。


また、


転院することで主治医や医療スタッフも複数の医療機関が関与することになり、情報共有の難しさも生じます。


脳卒中の薬物治療はその基礎疾患である。高血圧、不整脈、糖尿病、脂質異常症などのコントロールが基本となります。

脳出血クモ膜下出血ではこれら以外に特異的な再発予防薬はありませんが、


脳梗塞は、病型によって予防薬があります。
抗血小板凝集薬、抗凝固薬、抗けいれん薬などが必要になる場合があります。


予後

脳卒中という一般には麻痺や言語障害などの重度障害が残存するイメージが強いですが、就労年齢における予後は比較的良好であり、約7割が日常生活上ほぼ介助を必要としない状態まで回復しています。
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3,両立支援の留意点

1)障害に対する理解
脳卒中後の障害については、「目に見える障がい」「目に見えない障がい」があります。大きく分けて以下の3つのパターンがあります。

①手足の運動麻痺のように本人も周囲も分かる障害。
②感覚障害のように自覚はあるが周囲には分かりにくい障害。
認知障害のように周囲が何となく気づいているが理解し難く、
 かつ本人の自覚が乏しい障がい(高次脳機能障がい)。


②③は見落とさないように注意が必要です。
特に高次脳機能障害は症状が様々で周囲も理解しにくい場合があるので、本人や医療機関からの情報収集を行い、個人情報に十分留意しながら職場で共有することが望まれます。また、身体障害者手帳(肢体不自由)、精神障害者保健福祉手帳(高次脳機能障害)が社会参加に有用な場合があり手帳申請の検討もしておくべきでしょう。


2)医療機関での情報共有
病状と障害とを把握するためには、主治医や病棟看護師およびリハビリテーションスタッフなどの多職種と連携して情報収集を行い、本人からの情報と合わせて整理しておく必要があります。

治療内容やリハビリテーション内容、予後の見通し、補助具のこと等、支援する上でも復職診断書等も必要となります。


3)安全な通勤のための配慮
杖や車椅子を使用している場合、ラッシュ時の通勤は非常に困難を伴います。出退勤時間をずらすことや公共交通機関利用の通勤が実際に可能かどうかのチェック、エレベーター使用も考慮した通勤経路の見直しなどの支援も必要です。

特に都市部以外では自動車運転が必要な場合も多く、その際の自動車運転再開の手順も必要な支援の一つとなります。自動車運転再開の可否について、神経心理学的検査や実車評価が必要となります。またてんかん発作があった場合には、発作がない期間が2年間必要となるので再開時には注意を要します。


4)職場での配慮
職場における環境整備、作業内容の見直し、業務量の調整などは耐久性や適応能力を確認しながら行っていくという点で各疾患共通と思われますが、

脳卒中で特異的な点をいくつか挙げておきます。ふらつきがある場合は高所作業や移動しながらの作業などでは転倒・転落などの状況下で低温火傷も起こし得ます。

高次脳機能障害では見落とし手順を忘れるなどのトラブルが起こり得ます。

適切な配慮を行うためには、患者の機能評価と職場状況の把握がカギとなりますので、職業情報収集票と復職判断を行う時期での機能評価票の精度を高めておくことが重要です。

両立支援コーディネーターは患者本人とのやり取りだけでなく、是非ともリハビリテーション専門職との連携を深める必要があります。


また、


これらのサポートを職場の誰かに任せるとその人の業務が過度となる場合が多いため、支援側にも配慮が必要であることを職場に理解してもらうことが重要です。もちろん個人情報に関わることなので、本人ともよく話し合った上で可能な範囲で職場内の情報共有が出来ることが望ましい。


5)過度の配慮にも注意
周囲が気を使うあまりに、障がいに対する配慮が過剰となることも経験されます。もちろん無理を押して麻痺側を酷使すれば関節や筋肉を痛めてしまいます(過用症候群)。逆に人は自身の能力を使わないことで退化します。本人の能力を見ながら出来ることを伸ばしていき、ステップアップに繋がればモチベーションも高くなります。そのためには、職場の上司との意見交換ができる環境づくりが重要となることを職場に伝えておくべきです。
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本日は、両立支援コーディネーターに求められる医療知識(脳卒中分野)についてまとめてみました。


両立支援を行う上で、基本的な医療知識が必要となる理由は、

典型的な疾病や治療に関して、その特徴、経過および就業に当たって影響するためです。

また、

疾病のみならず障がいに関する理解(回復過程、障害者手帳両立支援の基本となるからです。

その人がその人らしく、よりよく生活していけるように、
最適なサポートができるように学び続けます。

最後までお読みいただきありがとうございます。
参考にしていただければ幸いです。



≪参考図書≫
独立行政法人 労働者健康安全機構 
 治療と仕事の両立支援コーディネーターマニュアル

≪参考資料≫
独立行政法人 労働者健康安全機構 基礎研修資料
独立行政法人 労働者健康安全機構 (JOHAS)
独立行政法人 労働者健康安全機構 労災疾病等医学研究普及サイト
www.johas.go.jp
www.research.johas.go.jp
脳卒中データバンク2019
http://strokedatabank.ncvc.go.jp/
・一般社団法人 日本脳卒中学会
www.jsts.gr.jp


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